自動火災報知設備
自動火災報知設備とは
火災により発生する炎や熱、煙を感知器で検知し、受信機や音響装置を鳴動させて防火対象物内に火災の発生を報知する設備。基本的な構成と主な機能は以下のとおり。
- 感知器:炎・熱・煙を自動で感知し、火災信号を受信機に送信する
- 受信機:自動火災報知設備の主要装置で、火災信号を送受信する
- 発信機:火災発見者が手動でボタンを押し、火災信号を受信機に送信する
- 中継器:感知器や防排煙などの端末と受信機間のやりとりを中継する
- 音響装置:火災の報知などを行う
自動火災報知設備の設置基準
基準項目 | 原則 | 例外 | |
防火対象物 | 特定防火対象物 | 300㎡以上 | 蒸気浴場、熱気浴場は200㎡以上 |
特定用途を含む複合用途防火対象物 | |||
非特定防火対象物 | 500㎡以上 | 格納庫、重要文化財などは面積問わず | |
教会、神社、事務所などは1,000㎡以上 | |||
階数 | 地階、無窓階 | 300㎡以上 | キャバレー、遊技場、料理店、飲食店などは100㎡以上 |
3階以上10階以下 | - | ||
11階以上 | すべて | - | |
地階、2階以上にある駐車場 | 200㎡以上 | - | |
その他 | 危険物製造所等 | 指定数量の10倍以上 | - |
通信機器室 | 300㎡以上 | - |
警戒区域とは
火災の発生区域を、他の区域と区別して識別できる最小単位の区域のこと。
警戒区域の面積
1つの警戒区域の面積は、600㎡以下。ただし、防火対象物の主要な出入口から中を見通すことができる場合は、1,000㎡以下にできる。
警戒区域の辺の長さ
1つの警戒区域の辺の長さは、50m以下。ただし、光電式分離型感知器を設置する場合は、100m以下。
警戒区域の階数
警戒区域は、原則として2つの階にわたらないようにし階ごとに設定する。ただし、1つの警戒区域の面積が500㎡以下の場合は2つの階にわたることができるが、3つの階にわたるのは不可。
たて穴の警戒区域
屋内階段、パイプダクト、エレベーター昇降機などたて穴の警戒区域は2つ以上の階にわたることができる。
階段室
階段室の場合、地階が1階のみであれば地上部分と同一警戒区域、2階以上であれば地階部分と地上部分は別警戒区域とする。
警戒区域設定の注意
警戒区域の番号は、原則として下の階から上の階へと付けていく。階段などのたて穴区画は平面階の後、同じ階で警戒区域が分かれている場合は受信機に近い警戒区域から番号を付ける。
感知区域と感知器の設置
1つの警戒区域の中にある壁などによって囲まれた部屋のこと。壁または取り付け面から0.4m以上(作動式分布型と煙感知器は0.6m以上)突き出した梁などによって区画された部分。※感知が有効と思われる範囲のこと
感知器の取付面(天井までの高さの限界)
種別 | 取付面 | ||||
~4m未満 | ~8m未満 | ~15m未満 | ~20m未満 | 20m以上 | |
煙感知器 | 煙式3種 | - | 煙式2種 | 煙式1種 | - |
熱感知機 | 定温2種 | 定温特種 定温1種 差動式スポット型 補償式スポット型 |
差動式分布型 | - | - |
炎感知器 | 炎感知器 |
感知器ごとの設置原則
種別 | 傾斜 | 吹出口 | 吸気口 | 取付面 | 壁・梁 | |
熱感知機 | 差動式分布型 | 5度以上× | - | - | 面の下方0.3m以内 | - |
スポット型 | 45度以上× | 1.5m以上離す | ||||
上記以外 | - | |||||
煙感知器 | 光電式分離型 | 90度以上× | - | 吸気口付近 | 面の下方0.6m以内 | 0.6m以上離す |
スポット式 | 45度以上× | 1.5m以上離す | ||||
上記以外 | - | |||||
炎感知器 | すべて | 90度以上× | - | - | 面の下方0.3m以内 | - |
感知器を設置しなくても良い場所
感知器の有効作動が見込めないため、設置しなくても良い場所は、以下のとおり。
- 上屋その他の外部の気流が流通する場所で、感知器によっては火災の発生を有効に感知することができない場所(炎感知器は除く)
- 感知器の取付面の高さが20m以上の場合(炎感知器を除く)
- 主要構造部を耐火構造とした建築物の天井裏の部分
- 天井裏において、その天井と上階との床との間が0.5m未満の場合(天井が耐火構造の場合は床との距離に関係なく省略可)
- 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いたスプリンクラー設備か水噴霧消火設備または泡消火設備のいずれかを設置した場所における、その有効範囲の部分(特定防火対象物や煙感知器の設置義務のある部分を除く)
熱感知機
熱感知機の感知面積
取付面の高さ | 差動式スポット型 | 補償式スポット型 | 定温式スポット型 | |||||
1種 | 2種 | 1種 | 2種 | 特種 | 1種 | 2種 | ||
4m未満 | 耐火構造の防火対象物 | 90㎡ | 70㎡ | 90㎡ | 70㎡ | 70㎡ | 60㎡ | 20㎡ |
その他の防火対象物 | 50㎡ | 40㎡ | 50㎡ | 40㎡ | 40㎡ | 30㎡ | 15㎡ | |
4m以上 8m未満 |
耐火構造の防火対象物 | 45㎡ | 35㎡ | 45㎡ | 35㎡ | 35㎡ | 30㎡ | - |
その他の防火対象物 | 30㎡ | 20㎡ | 30㎡ | 20㎡ | 20㎡ | 15㎡ | - |
熱感知機を設置できない場所
火災以外で室温の高いところなど、設置できない場所は以下のとおり。
- 排ガスが多量にたまる場所(例:駐車場):定温式
- 著しく高温となる場所や厨房(例:ボイラー室、スタジオ):差動式分布型
- 不足性ガスが発生する恐れのある場所(例:バッテリー室):差動式スポット型
煙感知器
煙感知器の感知面積
取付面の高さ | 感知面積 |
4m未満 | 150㎡ |
4m以上20m未満 | 75㎡ |
煙感知器を設置できない場所
火災以外で煙が発生するなど、設置できない場所は以下のとおり。
- 排気ガスが多量に滞留する場所
- 著しく高温となる場所
- 厨房その他、正常時において煙が滞留する場所
- 腐食性ガスが発生する恐れのある場所
- じんあい、微粉が多量に滞留する場所
- 水蒸気が多量に滞留する場所
- 結露が発生する場所
- 煙が多量に流入する恐れのある場所
煙感知器の設置義務
煙感知器を必ず設置しなければならない場所は、以下のとおり。
- 階段、傾斜路
- エレベーターの昇降路、リネンシュート、パイプダクト
- 次の廊下および通路
- 特定防火対象物
- 寄宿舎、下宿、共同住宅など(令別表5項ロ)
- 特殊浴場以外の公衆浴場(令別表9項ロ)
- 工場、作業場、映画スタジオなど(令別表12項)
- 令別表1項~14項に該当しない事業場(令別表15項)
- 地階、無窓階および11階以上の階(特定防火対象物および令別表15項の防火対象物に限る)
- 感知器の取付面の高さが15m以上20m未満の場所
炎感知器
炎感知器の設置基準
天井の高さが20mを超える場合は炎感知器を設置する。また、じんあい、微粉が多量に滞留する場所や排気ガスが多量に滞留する場所には煙感知器が設置できないため、炎感知器を設置する。
炎感知器が設置できない場所
火災以外で紫外線や赤外線が発生するなど、設置できない場所は以下のとおり。
- 著しく高温となる場所
- 厨房その他、正常時において煙が滞留する場所
- 腐食性ガスが発生する恐れのある場所
- 水蒸気が多量に滞留する場所
- 結露が発生する場所
- 煙が多量に流入する恐れのある場所
受信機・発信機
受信機の設置
台数による設置基準は以下のとおり。
設置台数 | 種別 |
3台以上 | P型1級多回線 |
2台以下 | P型1級1回線 P型2級 P型3級 |
延べ面積による設置基準は以下のとおり。
延べ面積 | 種別 |
350㎡以下 | P型2級1回線 |
150㎡以下 | P型3級 |
設置場所等の注意は、以下のとおり。
- 取付の高さは、床面から0.8m以上、1.5m以下(座って操作する場合は0.6m以上)
- 受信機付近に警戒区域一覧図を備える
- アナログ式の場合は、設定表示温度等一覧図を備える
発信機の設置
発信機は、火災信号を手動で発信する機器で、設置基準は以下のとおり。
- 押しボタンは、床面から0.8m以上、1.5m以下に設ける
- 各階ごとに、その階の各部分からの歩行距離が50m以下
- 発信機の近くに赤色表示灯を設ける(発信機直近に屋内消火栓用表示灯がある場合は省略可)
地区音響装置
地区音響装置は、火災信号を受けて鳴動するベルのこと。原則として防火対象物の全域にわたって火災を報知することができるように配置する。ただし、地階を除く5階以上の建物で、延べ面積3,000㎡以上の大規模な防火対象物では、一斉鳴動させると混乱を招く恐れがあるため区分鳴動(出火階と出火階直上階)でよい。この場合、一定時間経過後に一斉鳴動させる。また、出火階が1階もしくは地階の場合は、出火階と出火階直上階および地階全部のベルが鳴動する。
地区音響装置の設置基準
- 各階ごとに、その階の各部分から水平距離が25m以下となるように設ける
- 音響装置の中心から1m離れた位置で90dB以上(音声警報は92dB以上)の音圧
- 1つの防火対象物に2つ以上の受信機が設置されている場合は、いずれの受信機からも鳴動可
消防機関へ通報する火災報知設備
消防機関へ通報する火災報知設備が必要な防火対象物は、赤字が全部、青字が500㎡以上、黒字が1,000㎡以上
項 | 防火対象物 | |
(1) | イ | 劇場、映画館、演芸場または観覧場 |
ロ | 公会堂または集会場 | |
(2) | イ | キャバレー、カフェ、ナイトクラブその他これらに類するもの |
ロ | 遊技場またはダンスホール | |
ハ | 性風俗関連特殊営業を営む店舗 | |
ニ | カラオケボックスその他遊興のための設備または物品を個室において客に利用させる役務を提供する業務を営む店舗 | |
(3) | イ | 待合、料理店その他これらに類するもの |
ロ | 飲食店 | |
(4) | 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗または展示場 | |
(5) | イ | 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの |
ロ | 寄宿舎、下宿または共同住宅 | |
(6) | イ | 病院、診療所または助産所 |
ロ | 老人短期入居施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム(要介護)、介護老人保健施設、救護施設、乳児院、知的障害児施設、盲ろうあ児施設、重症心身障害児施設、障害者支援施設 | |
ハ | 老人デイサービスセンター、軽費老人センター、老人福祉センター、老人介護支援センター、有料老人ホーム、更正施設、助産施設、保育所、児童養護施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設(通所)、肢体不自由児施設(通所)、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援センター、児童家庭支援センター、身体障害者福祉センター、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム | |
ニ | 幼稚園または特別支援学校 | |
(7) | 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの | |
(8) | 図書館、博物館、美術館その他これらに類するもの | |
(9) | イ | 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの |
ロ | イに掲げる公衆浴場以外の公衆浴場 | |
(10) | 車両の停車場または船舶もしくは飛行機の発着場(旅客の乗降または待合の用に供する建築物に限る) | |
(11) | 神社、寺院、教会その他これらに類するもの | |
(12) | イ | 工場または作業場 |
ロ | 映画スタジオまたはテレビスタジオ | |
(13) | イ | 自動車車庫または駐車場 |
ロ | 飛行機または回転翼飛行機の格納庫 | |
(14) | 倉庫 | |
(15) | 全各項に該当しない事業場 | |
(16) | イ | 複合用途防火対象物のうち、その一部が(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項または(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの |
ロ | イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物 | |
(16の2) | 地下街 | |
(16の3) | 建築物の地階((16の2)項に掲げるものの各階を除く)で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたもの | |
(17) | 重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡もしくは重要な文化財として指定され、または重要美術品として認定された建造物 | |
(18) | 延長50m以上のアーケード | |
(19) | 市町村長の指定する山林 | |
(20) | 総務省令で定める舟車 |
消防機関へ通報する火災報知設備の設置場所は以下のとおり。
- 火災通報装置:防災センターなどの消防活動の拠点となる場所
- 火災通報装置以外:防災センターおよび多数の者の目に触れやすく、火災に際してすみやかに操作できる箇所
設置の例外
消防機関へ通報する火災報知設備の設置の例外は以下のとおり。
- 消防機関から著しく離れた場所(約10km以上)
- 消防機関からの歩行距離が500m以下の場所
- 消防機関へ常時通報できる電話を設けた場合(ただし、(5)項イ、(6)項イ~ハは火災通報装置が必要:上記令別表の太字)
自動火災報知設備の電源・配線
電源の種類と設置基準
種類 | 説明 |
常用電源 | 通常用いる電源。交流伝では電源電圧は300V以下 ※蓄電池設備を常用電源とする場合あり。 |
非常電源 | 常用電源が停電した場合に備える電源。専用の受電設備または蓄電池設備を用いる ※延べ面積1,000㎡以下の特定防火対象物は、蓄電池設備に限る |
予備電源 | 常用電源や非常電源が遮断された場合に、自動火災報知器のみで必要最小限度の機能を保持できるように備えるための電源 |
非常電源の蓄電池設備の設置基準は以下のとおり。
- 蓄電池設備の構造および性能
- 自動で充電し、充電電源電圧が定格電圧の±10%範囲内で変動しても機能に異常なく充電できる
- 過充電防止装置を設ける
- 自動または手動により、容易に均等充電が行える装置を設ける(均等充電を行わなくても機能に異常を生じない場合は不要)
- 設備の出力電圧または出力電流を監視できる電圧計または電流計を設ける
- 0℃~40℃までの範囲の周辺温度において、機能に異常を生じない
- 蓄電池の構造および性能
- 単電池あたりの公称電圧
- 鉛蓄電池:2V
- アルカリ蓄電池:1.2V
- 単電池あたりの公称電圧
- 充電装置の構造および性能
- 充電中である旨を表示する装置を設ける
予備電源の設置基準は以下のとおり。
- 予備電源は密閉型蓄電池とし、他の電気回路の開閉器によって遮断されないようにする
- 主電源が停止した場合は主電源から予備電源に、電源が復旧した場合は予備電源から主電源に自動的に切り替えられる
- 容量は、監視状態を60分間継続した後、2つの警戒区域の回線を作動させることができる消費電流を加算し、10分間継続して動作させることができるようにする
- 予備電源の容量が非常電源の容量以上である場合は、非常電源を省略可
※予備電源の省略は不可
配線の基準
受信機を起点として、自動火災報知設備の各機器や装置への配線は、電気工作物に係る法令に基づいて施工される。規定は以下のとおり。
- 感知器の配線は、容易に導通試験ができるよう送り配線とする
- 警戒区域ごとの回路の末端に発信機や押しボタンまたは終端抵抗を設ける
- P型受信機の感知器回路の共通線は、1本に付き7警戒区域以下
- P型またはGR型受信機の感知回路抵抗は、50Ω以下
- 接地電極に常時直流電流を流す回路方式は禁止
- 感知器、中継器、発信機などの回路と、自動火災報知設備以外の回路の同一配線での共用禁止
- 自動火災報知設備の配線とその他の配線は、60V以下の弱電回路を除き、同一の管、ダクト、線ぴ、プルボックスの中に設けることはできない
耐火配線と耐熱配線
配線には一般配線のほか、耐火配線と耐熱配線があり、用途は以下のとおり
- 耐火配線:非常電源から受信機または中継器までの配線
- 耐熱配線:受信機から地区音響装置までの回路および消防用設備等の操作回路に使用する電源