消防設備士 乙4「構造・機能・整備」学習備忘録

自動火災報知設備の構造・機能

感知器の種類

感知器は、防火対象物の警戒区域に設置され、火災の熱、煙、炎を検知して火災信号を受信機に送り、火災の発見を報知します。感知器として代表的なものは、熱感知機煙感知器炎感知器がある。

熱感知機 差動式 スポット型(1種・2種)
分布型 空気管(1種・2種・3種)
熱電対(1種・2種・3種)
熱半導体(1種・2種・3種)
定温式 スポット型(特種・1種・2種)
感知線型(特種・1種・2種)
熱複合式 スポット型 多信号機能
補償式(1種・2種)
熱アナログ式 スポット型
煙感知器 イオン化式 スポット型(1種・2種・3種)
光電式 スポット型(1種・2種・3種)
分離型(1種・2種)
煙複合式 スポット型
イオン化アナログ式 スポット型
光電アナログ式 スポット型
分離型
炎感知器 紫外線式 スポット型
赤外線式 スポット型
紫外線赤外線併用式 スポット型
炎複合式 スポット型

 

熱感知機

熱の検出方式によって、定温式差動式および補償式がある。定温式は特種が、差動式と補償式は1種が最も感度が良い。

定温式の熱感知機

火災の熱により一定の温度以上になると作動する。一局所の周囲の温度を感知するスポット型と外観が電線状の感知線型がある。

  • 定温式スポット型熱感知機
    定温式スポット型熱感知機

引用元:日本火災報知機工業会

差動式の熱感知機

火災の熱によって空気室(感熱室)内の空気が暖められて膨張することでダイヤフラムが押し上げられて接点と接触し、火災信号を受信機に送る。

  • 差動式スポット型熱感知機

差動式スポット型熱感知機

引用元:日本火災報知機工業会

補償式、熱複合式の熱感知機

補償式とは、一定の温度以上になると作動する定温式の機能と、火災の熱で一定の温度上昇率以上になると作動する差動式の両機能を備えている。また、補償式と同じく両機能を備えた熱複合式は、定温式と差動式のどちらで感知したのかを受信機で判別できる

 

煙感知器

煙の検出方式によってイオン化式光電式がある。共に1類から3類まで区分され、1類が最も感度が良い。

光電式の煙感知器

火災の煙による光の乱反射または遮光を検出し、火災信号を受信機に送る。

  • 光電式スポット型煙感知器

光電式スポット型煙感知器

  • 光電式分離型煙感知器

光電式分離型煙感知器

引用元:日本火災報知機工業会

イオン化式の煙感知器

火災の煙による空気の電離状態の変化を検出し、火災信号を受信機に送る。スポット型のみ。なお、イオン化式の煙感知器は放射性同位元素装備機器に該当するため、廃棄の際は注意が必要。

 

炎感知器

検出する光の種類によって紫外線式赤外線式がある

  • 赤外線式・赤外線式スポット型炎感知器

紫外線・赤外線式スポット型炎感知器

引用元:日本火災報知機工業会

 

受信機と発信機

受信機とは

受信機は、感知器や発信機からの火災信号を受信し、主音響と地区表示により火災の発生とその場所を知らせる。火災信号の受信方式によって、P型とR型がある。その他、消防機関へ報知するM型や、ガス漏れ信号を受信し報知するG型、注意表示が行えるアナログ式がある。受信機の仕様は以下のとおり。

  • 主電源装置、試験装置は受信機の前面に設ける
  • 2回線から火災信号を同時に受信した場合も火災表示を可能とする
  • 定格電圧が60Vを超える受信機の金属製外箱には、接地端子を設ける
  • 主電源では90%以上110%、予備電源では85%以上110%以下の範囲で電圧が変動しても、機能に移住尾を生じない
  • 自動試験機能を有する場合、作動条件は容易に変更できない
  • P型、R型の火災信号受信から火災表示までの所要時間は5秒以内G型の場合は60秒以内
  • P型1級受信機が火災信号を受信した場合は、赤色の火災灯を自動表示する
  • G型受信機がガス漏れ信号を受信した場合は、黄色のガス漏れ灯を自動表示する
  • 蓄積式受信機の場合、蓄積時間は5秒を超え60秒以内とする。また、蓄積型の感知器や中継器と一緒に設ける場合は以下のとおり
    • 感知器、中継器、受信機の蓄積時間の合計が60秒以内
    • 煙感知器以外の感知器を設ける場合、中継器、受信機の設定累積時間の最大時間合計が20秒以内
P型受信機
  P型1級 P型2級 P型3級
1回線
多回線 1回線 2~5回線 1回線
火災表示試験
火災表示の保持装置
予備電源
地区表示灯
火災等(赤色)
電話連絡装置
導通試験装置
回線数の制限 なし 1回線 5回線以下 1回線 1回線
地区音響装置(dB) 90以上 90以上 90以上
主音響装置(dB) 85以上 85以上 85以上 85以上 70以上

P型の受信機は、火災信号や火災表示信号を共通の信号として、設備作動信号を共通もしくは個別の信号として受信し報知する。性能に応じて1級~3級があり、火災の発生を警戒区域ごとに1回線で区別している。

  • P型1級:最も一般的な火災受信機。受信すると地区表示灯が点灯し、主音響と地区音響設備が鳴動する。必要に応じて非常放送設備や防火防排煙設備、消火設備などを起動する
  • P型2級:保守点検用の電話機能と断線監視機能が無い。比較的小規模の建物に設置されるもので最大5回線
R型受信機

信号の受け方がP型と異なる。火災信号、火災表示信号もしくは火災情報信号を固有の信号として、受信または設備作動信号を共通もしくは固有の信号として受信し報知する。

 

発信機とは

人が火災を発見した場合に、手動で火災信号を発信する装置でP型T型に分類される。屋内消火栓の消火ポンプを起動するスイッチを兼ねる場合もある。発信機の仕様は以下のとおり。

  • 火災信号は、押しボタンスイッチが押されたときに伝達される
  • 押しボタンスイッチが自動的に元の位置に戻らない構造の発信機は、スイッチを元の位置に戻す操作を忘れない措置を講ずる
  • 押しボタンスイッチの前方に保護版を設け、保護版を破壊または押し外すことにより押すことができる
  • 保護版は透明の有機ガラスを用いる
  • P型の外箱の色は、赤色である
P型発信機

押しボタン式で1級と2級がある。P型2級は受信機との通話用電話ジャックおよび信号受報表示ランプを備えていない

T型発信機(非常電話)

受信機との間で通話ができる。受話器を上げると信号を発信する。

 

中継器と地区音響装置

中継器とは

R型受信機システムの1つで、感知器、発信機から発せられる火災信号を受信して、受信機もしくは消火設備、排煙設備などに火災信号を送信する。中継器の仕様は以下のとおり。

  • 受信から発信までの所要時間は5秒以内
  • 地区音響装置を鳴動させる中継器は、受信機で操作しない限り鳴動を継続させる。
  • 不燃性または難燃性の外箱で覆う
  • 電力を受信機や他の中継器から供給している場合は、保護装置(ビューズ、ブレーカーなど)を設ける
  • 電力を受信機や他の中継器から供給しない場合は、保護装置と予備電源を設ける
  • 定格電圧が60Vを超える場合は、接地端子を設ける
地区音響装置とは

建物内の各所に設置され、火災信号を受けて鳴動するベルのことで、初期消火と避難を促す。地区ベル非常ベルともいう。

 

自動火災報知設備の試験

P型1級受信機

P型1級受信機では、火災表示試験回路導通試験同時作動試験予備電源試験を行う。

火災表示試験

1回路ずつ火災発報状態にし、受信機や音響装置などの各機器に異常が無いかを確認する。

  1. 連動停止スイッチを操作する(スイッチがない場合は2から操作)
  2. 火災試験スイッチを試験側へ入れる
  3. 回路選択スイッチを操作する
  4. 地区表示灯が点灯し、音響装置が鳴動する
  5. 火災復旧装置を操作する(火災灯と音響装置がOFFになる)
  6. 以降、回路ごとに3~5を繰り返す
回路導通試験(導通試験)

電流が正常に流れて信号が送られているかを確認する。
非火災報(誤報)は、終端抵抗が短絡した場合に生じる。断線や受信機の電圧計の指示値異常は非火災報の原因ではない。

  1. 導通試験スイッチを操作する
  2. 回路選択スイッチを操作する
  3. 電圧計の指示が適正か(導通表示灯が点灯)を確認する
  4. 以降、回路ごとに2~3を繰り返す
同時作動試験

任意の5回線を同時に火災作動させ、受信機や音響装置などが正常に動作するかを確認する。

  1. 火災試験スイッチを操作する
  2. 回路選択スイッチを操作し、5回線分を火災作動させる
  3. 火災灯と地区表示灯の点灯状態と音響装置の鳴動状態を確認する
  4. 受信機に異常が無いことを確認する
予備電源試験

予備電源への切り替えおよび復旧、端子電圧が正常かを確認する。

  1. 受信機のふたを開ける
  2. 電源スイッチをOFFにする
  3. バッテリー交流電源が自動で切り替わるか確認する
  4. 電源スイッチをONにする
  5. 予備電源スイッチを操作する
  6. 電池の電圧を確認する

P型2級受信機

P型2級受信機の試験では、回路同導通試験の手順がP型1級受信機と異なり、その他は同じ手順。

回路導通試験

P型2級受信機では、導通試験スイッチを設けなくても良いため、発信機を操作して確認する。

  1. 発信機を押す
  2. 導通を確認し、発信機のボタンを元に戻す
  3. 火災復旧スイッチを操作する

 

熱感知機

差動式スポット型、定温式スポット型の作動試験

火口部をベンジンで暖めた加熱試験器を感知器に被せて、発報までの時間を計測する。

差動式分布型(空気管式)の流通試験
  1. 検出部の試験孔または空気管の一端にマノメーターを接続し、試験コックを流通試験位置に合わせる
  2. 試験ポンプから空気を送り、マノメーターの水位を100mmまで上昇させる
  3. 1分間のゲージの動きを確認し、漏れがないかを確認する
  4. 試験ポンプを外し、水位が50mmに下がるまでの時間を計る
差動式分布型(空気管式)の作動試験および作動継続試験

検出部の試験孔に試験ポンプを接続し、感知器の作動空気圧に相当する空気を注入して作動するまでの時間を測定する。次に検出部が復旧するまでの時間を測定する。

差動式分布型(空気管式)の接点水高試験

検出部の試験孔または空気管端子にマノメーターおよび試験ポンプを接続し、空気を送り込んで検出部が作動するのに必要な空気圧を測定する。

差動式分布型(熱電対式)の作動試験

メーターリレー試験器のプラグを検出部に差し込み、電圧を加えて作動した電圧を測定する。

差動式分布型(熱電対式)の回路合成抵抗試験

メーターリレー試験器のプラグを検出部に差し込み、熱電対回路の合成抵抗の値を測定する。

 

煙感知器

イオン化式スポット型、光電式スポット型の作動試験

加煙試験器を感知器に被せ、線香の煙が充満して発報に至るまでの作動時間を計測する。

 

光電式分布型の作動試験

数種類のフィルターを使用して、光の透過率によって作動するかを確認する。

 

炎感知器

炎感知器の作動試験

作動試験器を感知器の正面20cm以内に位置し、作動時間を測定する。

 

 配線

共通線試験

受信機のふたを開けて共通線を外し、導通試験スイッチおよび回路選択試験を操作する。

※表示等や感知器、地区音響装置などは、+と-の2本の電線で動作するが、-の回線を共通線(C線)、+を表示線(L線)として使用することができる。(例:6つの感知器がある場合、+が6本、-が1本の計7本)

送り配線試験

感知器の表示線(L線)を外し、受信機で導通試験を行い、外した感知器について断線しているかを確認する。

※感知器回路の電線が1カ所でも断線した場合に、受信機が検知できるような配線になっているかを確認する。

絶縁抵抗試験
対地電圧の数値 絶縁抵抗
150V以下 0.1MΩ以上
150Vを超え 300V以下 0.2MΩ以上
300Vを超える 0.4MΩ以上

 

ガス漏れ火災警報設備

構成と種類

ガス漏れ火災警報設備とは、警戒区域に設置した検知器により可燃性ガスを検知しガス漏れ信号を発する装置。ガス漏れ検知器中継器受信機警報装置で構成される。

ガス漏れ検知専用のG型と自動火災報知設備と一体になったGP型・GR型がある。

 

受信機

警戒区域に設置した検知器によりガス漏れを検知した場合は、火災発生とは別にガス漏れ灯と地区表示灯が点灯する。

遅延時間

検知器がガスを検知してから受信機が警告の表示を行うまでの時間で、検知器と受信機の標準遅延時間の合計は60秒以内中継器がある場合は±5秒

 

ガス漏れ検知器

設置基準

空気より軽い可燃性ガス:水平距離8m以内、検知器の下端0.3m以内。ただし特定条件による基準は以下のとおり。

  • 換気口がある場合:換気口(外気を室内へ取込む)から1.5m以内設置不可
  • 吸気口がある場合:吸気口(室内の空気を排出)付近へ設置
  • 0.6m以上の梁がある場合:燃焼器または貫通部側へ設置する

空気より重い可燃性ガス:水平距離4m以内床面上0.3m以内

検知濃度

爆発下限界(着火によって爆発を起こす最低濃度)の1/200以下では非作動1/4以上で動作

警報機能

警報機能付きの場合に必要な機能は以下のとおり。

  • 作動確認装置(作動確認灯:赤色
  • 通電表示灯(電源灯:緑色
  • スピーカー(警報音圧:1mで70dB
  •  

音声警報装置

マイク、スピーカー、増幅器、操作部で構成される。スピーカーの設置は各階ごとに水平距離25m以下1m離れた場所で70dB以上。※放送設備がある場合は警報装置の省略可

 

予備電源

2回線を10分間動作その間他の回線を監視状態にすることができる容量で設置する

 

受信機の試験・点検

  1. ガス漏れ表示試験スイッチを試験側に入れる
  2. 遅延時間を有するものは、1回線ごとにガス漏れ灯の表示を確認し、順次操作する
  3. 自己保持機能を有するものは、1回線ごとに保持機能を確認しながら復旧スイッチを操作し、次の回線に移行する

 

ガス漏れ検知器の試験・点検

検知器の点検
  1. 検知器の通電表示灯(電源灯)の点灯確認(緑色)
  2. 加ガス試験器を稼働させ、ガス漏れ確認灯(作動確認灯)の点灯確認(赤色)
  3. 中継器、ガス漏れ表示灯、検知区域警報装置の正常動作を確認
  4. 受信機のガス漏れ灯、主音響装置の作動および警戒区域の表示を確認
回路導通試験
  1. 受信機の回路導通試験スイッチを試験側に操作する
  2. 受信機の電圧計が適正な数値を示しているか、導通表示灯が点灯指定るを回路選択スイッチで確認する
  3. 2の手順を各階線分行う

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